疎外 (Entfremdung)←→無法 (anomie)
14 世紀後半には、alienacioun といふ言葉が「他者を遠ざける行爲、または所有權の放棄」を意味してゐました。15 世紀初めには「自分の財產や權利を他者に讓渡すること」といふ意味も持つやうになり、これは古 français 語の alienacion や、直接的には Latina 語の alienationem (主格では alienatio) から來てゐます。この Latina 語は「讓渡、放棄、分離」を意味する名詞で、alienare (「他のものにする、手放す、遠ざける、對立させる」の意) の過去分詞語幹から派生してゐます。さらに遡ると、alienus (「他の人や場所に屬する」) が語源で、これは alius (「別の、他の、異なる」の意) から來てをり、インド・ヨーロッパ語の語根 *al- (1) (「超えて、別に」の意) に由來してゐます。
中英語の alienation は、15 世紀初めには「精神的な能力の喪失、または精神病」を意味することもありました。これは Latina 語の alienare が「理性を奪ふ、狂はせる」といふ二次的な意味で使はれたことから來てをり、そこから alienist (精神科醫といふ意味の言葉) が生まれました。また、alienation of affection という phrase は、America の離婚訴訟における「他の誰かに恋をすること」を指す法的用語として 1861 年に登場しました。
「無法狀態、(神の) 法の違反」といふ意味で、1590 年代に français 語の anomie から英語に取り入れられました。これはギリシャ語の anomia (無法、法の缺如) に由來し、抽象名詞の anomos (法のない、無法の) から派生しています。この言葉は、a- (~がない、無を表す接頭辭、詳しくは a- (3) を參照) と、nomos (法、規則、PIE 語根 *nem-「割り當てる、分配する、取る」から) を組み合はせたものです。
無法